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勝山 祐衣

吉沼のレトロ看板を観察する

 こんにちは。筑波大学芸術専門学群の勝山祐衣です。


看板にはお店のオリジナリティが現れます。

吉沼市街地を歩いて出会うことのできるレトロ看板は、デジタルが主流の現代では見ることの少ない手書きの可愛らしい文字や、歴史と厳格さを兼ね備えた硬派なものまで、その表情は様々です。流れてきた時間に想いを馳せていると、時間をさかのぼったかのような不思議な気持ちになってきます。この記事では筆者が吉沼市街地を中心に歩いて見つけたレトロ看板をいくつか紹介します。

 まずはこちら。サクラヤは町の商店です。店の入り口の上部分の形が三角になっていて、オレンジがかった⻩色と白のコントラストがポップな雰囲気です。入り口右側に出て いる日よけは某カメラショップを連想させる緑と赤との組み合わせです。何気なく入り口 左の「たばこ」サインと色がリンクしていて統一感があります。文字の赤と自販機の赤が合っていていい感じです。

 文字は全体的に直線的で、折れる部分ではやわらかく曲がります。線の上下が白く縁取 られていて可愛らしいです。よく見ると、入り口上のメインの文字よりも、入り口横の日 よけに描かれた文字のほうが少しだけ横に⻑い気がします。手描きなのかなと想像が膨らんで楽しいです。 いっぽうで「メルシーショップ」の白い文字はマシュマロのようにむちむちしてやわらかそうです。


 塚越米穀店は、丸々とした字体が可愛らしいです。お腹が空いているせいか、かりんと うに見えてきてしまいました。時を経て風化したのであろう、木のテクスチャがむき出し になっている様子を見ると、この看板が作られた当初はどんなものだったのか想像が膨ら みます。背景のえんじ色との組み合わせを考えると、金色だったのでは. . . というのが筆者 の予想です。 さらによく見ると、文字の周りのみ外壁の色味が異なります。日に焼けて変色してしま ったのか、それとも元はストライプ柄だったのでしょうか. . .



  続いてはこちら、名糖の牛乳販売店です。「名糖牛乳」の文字はおそらく全国各所で見 られるものですが、控えめに筆で書かれた「吉沼販売店」の文字に人間味が感じられます。

す。先に取り付けられていた量産的な看板にオリジナル感を出そうと、大きなハシゴを使 って近所の人たちが見守りながら書いた. . .としたらなんだか楽しそうですが、割と高いと ころに掲げられているので発注して届いた看板に手で書いてから掲げた説が有力そうです。店主が書いたのか、書の達者なご近所さんが書いたのか、この看板ができた経緯が気 になります。



十一屋書店の看板文字は、シンプルな手書きの文字が良いアナログ感を出しています。 赤、⻘、黑の組み合わせはまさに3色ボールペン。全体に丸みがかった太めの線は、頼れるお兄さんのような堅実さと親しみやすさを感じさせます。文字の横線が全て平行に書かれている中で、「屋」の文字は角度がついた少し変わり者っぽく見えます。デジタルフォントにはない味が感じられて、一文字一文字をよく観察したくなる看板です。



最後は生どら焼きがおいしい宝集屋の看板です。活版印刷の活字のような字形が渋いですね。黑と金の色の対比には高級感が漂い、こだわりと風格が感じられます。一目見て、紡いできた歴史の深さを感じさせるような堂々たる看板です。


 レトロ看板の魅力は、色褪せたり風化したりして出てくる表情や、異なる時代の息遣い を感じられるところにあります。1 人で当時の様子に思いを巡らすのも楽しいですが、誰かと一緒に訪れて考えていることを共有してみたらまた違う楽しみ方ができます。

 古くからの商店や建築が残る吉沼地域では、看板が様々な表情を見せてくれています。 今度の休日は、のんびり散歩してみてはいかがでしょうか?


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