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小松諒治

住宅街に近接する原風景 in 高見原

こんにちは。理工学群社会工学類都市計画主専攻2年の小松諒治です。


今回はつくば市高見原を歩いて見つけた、ある「境界線」について紹介していきたいと思います。


まず初めにこちらの写真を見てください。



高見原5丁目付近 筆者撮影、一部加工


こちらの写真を一見する限りはごく普通の住宅と木々に見えると思いますが、実はこの場所にはある「境界」が存在します。


それは、「市街化区域」と「市街化調整区域」の境界です。


この記事を読まれた方の中には初耳の単語かもしれませんので、以下に簡単に説明を記しておきます。



・市街化区域:都市計画区域のうち既に市街地を形成している区域や、おおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域


・市街化調整区域:都市計画区域のうち市街化を抑制すべき区域


・都市計画区域:都市計画の対象とされる区域。国土の4分の1ほどを占める。



つくば市では市域の全域が都市計画区域に指定されていますが、そのうち市街化区域は18.8%に限られています(筑波大生が多く住んでいる天久保、春日、桜、天王台などはほぼ全域が市街化区域です)。


市街化区域と市街化調整区域では市街化が推進されるか否かに差がありますが、それだけではなく不動産にかかる税金の額や土地開発時の各種規制など、さまざまな点において差が生じてきます。


こんな2つの区域の境目が上の写真に隠れているのです。それではここでこの撮影地付近の都市計画図を参照してみましょう。



つくば市HPより引用、中央の十字が撮影場所


こちらの地図において、色がついている部分(色が異なるのは用途地域が異なるため)は市街化区域を、白色の部分は市街化調整区域をそれぞれ示しています。こうしてみると、先ほどの写真は市街化区域と市街化調整区域の境目をとらえているということがわかります。


地図を見ても市街化区域は整然と住宅が並んでいるのに対し、市街化調整区域は住宅がまばらなのがわかると思いますが、この市街化調整区域を歩いていると現代の都会や計画された市街地では見ることのできない風景にたくさん出会うことができます。



高見原4丁目付近(市街化調整区域)、筆者撮影




高見原4丁目付近(同上)、筆者撮影


周辺住民の方に取材させていただいたところ、住居の周囲にこのような風景が近接しているため、この地域に住んでいる人には散歩コースとしても親しまれているというお話をお聞きしました。私自身も大学周辺の妻木の集落付近を目的もなく自転車で散策することがあるので、もしこんな地区に住むことがあったら毎日散歩してしまうかもしれませんね。



さてここまでこの記事を読んだ方は、「市街化調整区域にも家があるならわざわざ市街化を抑制する必要なんかないのでは?」などと思う方もいるかもしれません。しかしそれでは都市計画上の大きな問題に直面してしまうのです。


皆さんは「スプロール現象」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。簡単に言ってしまえば、規制がないために都市が無秩序に広がってしまう問題のことを指します。この市街化調整区域にはスプロール現象を食い止める目的があるのです。


この目的から考えると、あまり市街化が進んでいない区域や今後開発をしないでおきたいエリアを市街化調整区域として指定していくことには一定のメリットがあるといえます。


しかしながらこの市街化調整区域は街にとってデメリットをもたらすこともあります。

特にこの高見原地区で顕在化している問題として、空き家問題が挙げられます。市街化調整区域では建物のリフォームや建て替えに対しても規制がかかってしまうことや、開発されてから約50年が経ち住民の高齢化が進んでいることにより、空き家の増加が近年深刻となっています。空き家の増加は周辺の住民の減少のみならず、治安の悪化や野生生物の増加など、住環境にも大きな影響を及ぼします。



さて長々とここまで書いてきましたが、市街化調整区域が持つ二面性が伝わっていれば幸いに存じます。次回の記事では高見原地区の住みやすさについて、住民の方へのインタビューをもとにこの地区の魅力を伝えていけたらと考えています。




参考文献

・谷口守 入門都市計画(2014)

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